ドイツ鉄道の話2008
久し振りに知り合いに会いたくなり、ドイツまで出かけることにした。今回は、鉄道を使うことにして、時刻表を見ながらスケジュールを作った。
ドイツの鉄道(DB)の時刻表はインターネットで簡単に調べられるようになったので、便利になった。ドイツの国際ハブ空港があるフランクフルトを起点として、デュッセルドルフ、ベルリンを廻って元に戻るルートを調べる。まず、フランクフルトからマインツ、コブレンツを経由してデュッセルドルフに行くルートを調べる。距離260km。以前はこのルートが幹線だったのが、従来線に格下げになっていた。曲がりくねったライン河沿いに走るこのルートではスピードを出せないためか、ICE(インターシティ・エクスプレス:新幹線級)がほぼ直線で走れる新線ができていて、約1時間半で到着する。別に急ぐ旅でもなし、それよりも鉄道でライン下りをするつもりだったから、従来線の時刻表を探す。やっと乗り換えなしで行けるIC(特急並み)列車を見つけて、予約した。しかし、座席がライン河側かどうかまで、分からない。
フランクフルト中央駅で列車の入線を待つ。入ってきた車両の窓が異様に汚れている。車外からティッシュペーパーで拭く。
(フランクフルト中央駅)
動き出したら、案の上、席が山側であることに気づく。それでも河側の席は空いていたので、見通せると思っていたら、肝心のラインの名所が見えるマインツーコブレンツ間だけ人が乗ってきた。一心不乱にパソコンを打っている。邪魔になって名所が見えない。やれやれ。それでもチラチラ見える古城は様変わりして、新しく改築されているところが多くなっている。おもむきがなくなっていると負け惜しみを言っているうちに、河は消え、デュッセルドルフ中央駅に着いた。
(ジュッセルドルフ中央駅プラットフォーム)
列車が止まったので、降りようとしたら、下にプラットホームがない。停車位置を間違えたらしい。誰もドアを開けようとせず、待っている。位置を直すとばかり思っていたら、列車は動き始め、どんどん加速する。車掌が前の車両へ飛んでいく。しかし、止まらない。車掌は帰ってきたが、別に何も言わない。客に何か証明書を書いている。こちらは証明書を貰ってもしょうがないから、どうしてくれると云ったら、次の駅の何番線かの列車が10分後にでるから、それで引き返してくれというだけで、謝罪は一切ない。しぶしぶその何番線とやらに行くと、目の前で列車は出て行く。乗り遅れたと、慌てて聞いてみると、前の列車が遅れていただけだった。結局4時間掛かってデュッセルドルフへ着いたことになる。
次はデュッセルドルフからベルリンへの移動である。ご自慢のICEに乗る。540kmを4時間17分で走るが、時速180kmは出る。ルール工業地帯からハノーファー過ぎまでは見慣れた光景で、つまらない。うねうねと平原がつながっているはずなのに、木立で挟まれた列車からの展望がきかない。ぶうぶう云っている内に旧東独領に入った。とたんに景色が一変した。よごれた赤煉瓦で組み上げた建物が現れる。半壊した小屋が目立つ。何となく雰囲気が暗い。壁崩壊後20年近く立っても復興していない感じ。ただし風力発電用の風車群が5分おきぐらいに現れてくる。村の修復より風車を優先したのかもしれない。ベルリン市内に入っても町が見えない。森の中を走っているとしか思えない。言われている通り、ベルリンは森の都である。昔は田舎駅でしかなかったベルリン中央駅に着く。日曜日だったせいか、人が群れている。駅以外何もないのに、むやみやたらと騒がしい。何か行事があるようにも思えないが、お祭り気分だった。壁があったときには異様な、危険な緊張感が存在していたことを思い出す。
ベルリンからフランクフルトまでの直通列車はない。ライプチッヒで乗り換えることにした。合計562km、4時間50分。ベルリン中央駅に入ってきた列車の運転席の窓をモップで洗っている。汚れた石けん水が車体に流れる。それは垂れ流し。客車の窓はそのまま。
(ベルリン中央駅)
さて、乗り込んだ列車の指定席に座るが、指定区間がベルリンからミュンヘンまでとなっている。おかしいなと思いながらそのまま乗る。検札の時も何も言われない。ライプチッヒにつく。同じホームの反対側に乗り換えの列車が止まっているはずである。指定車両番号も同じだから、ホームを横切るだけと気楽に考えていたら、列車は互いに逆に並んでいた。つまりホームの端から端までスーツケースを引っ張ることになった。乗ってみると指定席にはすでに人が座っている。エッと指定券を見直すと、我々が1時間後の列車に乗っていたことが分かった。ドイツの鉄道はあまり正確ではないかも知れないと、安全のため指定を早めの列車に切り替えていたのを忘れていたのである。車掌が席を探してくれたが、列車の最前席だった。前は壁、横の視界が狭い状態で、激しく揺れ、たちまち乗り物酔いになる。ヴァイマール、エアフルトなどの町々が現れるのを横目で見ながら、何とかフランクフルト空港駅まで頑張った。指定など取らずに、空席を探せばよかったのだが、荷物を持っての移動はしんどい。うまい手はありませんかねえ。以上がドイツ鉄道旅行の顛末。