あとがき

もともとは、旅日誌を書いていたつもりだったが、なんと年代記にもなっていることを発見した。50年近い旅の間に、変わっていった自分自身が映し出されていることが分る。最初に海外へ出た時は渡航自由化3年後で、何も知らず、緊張し、怯え、一方では無知から来る厚かましさと好奇心で、かなり恥知らずの旅人だったと思う。前半では、ビジネスが先行し、後からもう一度旅行するというパターンが多かったが、最後の方になると、観光が中心になっていったことから時の経過を知ることができる。

一方、世の中の移り変わりが下敷きになっていることも確かである。欧米は、何度訪れても変わったという印象を持たなかったが、中国を始めとするアジアの時間的な変化は凄まじい。極端に言えば、貧しかった地域が豊かな国に変貌してゆく、時の流れに立ち会っていたと云ってよい。この時期に世界は成長し、豊かになったことを実感する。逆に、中近東、アフリカ、南米に行かなかった理由も分かる。まだ貧しく、ビジネスチャンスのほとんどない、政治的に危険な国々には行く機会がなかったということになる。残念だが、この旅日誌の限界だった。

                                                                  2020年秋

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