トゥーンという町で昼食。グルグル歩いてやっとチーズフォンデューの店を見つける。子供達にはフォンデューは合わず、他の料理を取る。３時少し過ぎにインターラーケンに着いたので、ラウターブルンネンの滝を見に行く。そこから引き返して、グリンデルワルドに向かう。途中、どの山がアイガーか分からないうちにホテルに着いてしまう。

ホテルで部屋を二つ予約しておいたのが、一部屋になっていて、しかもアイガーが見えない方にされて、値段も安くなっていない。憤慨したが押し切られる。日本人が多い。ヴェッターホルンがきれいに見える。夕食は夕立のため、ホテルで食べる。愛想が悪い。

ベルンからのルートとしては、まずインターラーケンに向かう。インターラーケンは「二つの湖の間」という意味。手前のトゥーン湖の町で昼食を取り、インターラーケンから山に向かった。途中道を右手に取り、ラウターブルンネンに向かう。ラウターブルンネンには多くの滝がある。その一つ、シュタウプバッハの滝に行った。落差300ｍ。詩人バイロンが「黙示録の死神の蒼い馬の尻尾」と例えた。滝は地上まで届かず、霧となる。横穴から恐る恐る覗いてみた。そこから戻り、左に回ってグリンデルワルドへ出る。ホテルで一悶着。グリンデルワルドは観光客ずれして嫌な町だ。

1974.8.3　グリンデルワルド　ホテル　クロイツ＆ポスト

レストランで食事をしてからクライネ・シャイデックに戻る。向かい側の山を少し登って、草原にひっくり返って、アイガーを眺める。雲は全然無くて、素晴らしい天気。5時半に引き上げる。ホテルの3軒先のレストランヴォルターで夕食を食べる。

グリンデルワルド、クライネ・シャイデックとラウターブルンネンの位置が三角形を作っている。三角形の中はヴェンゲンという山である。三角形の外側にアイガー、メンヒ、ユングフラウが連なって並んでいる。本来の登山電車はユングフラウに登る線である。電車は、まずアイガーに向かい、アイガー北壁をくり貫いたトンネルの中で方向を変え、ユングフラウとメンヒ2山の鞍部にあるユングフラウヨッホ(3454m)まで登る。アイガー北壁の途中にアイガー壁駅がある。岩壁を切り開いた窓があり、下界が見える。もっとも凍り付いていた。トンネルの中の終着駅から少し歩いて、エレベータでスフィンクス展望台(3571m)に出る。駅まで戻り雪の上に出る。スキーの真似事をしても、幸い気持ちは悪くならなかった（何回か来ているうち、高山病になりかかった時もあった）。

  

しかし、この日一番楽しかったのは、クライネシャイデックの草原で、寝ころんでアイガーを見ていたときだったように記憶している。左手に見えるヴェッターホルンの姿も美しかった。

1974.8.4 　ツェルマット　ホテル　ニコレッタ

朝から霧で山は見えない。グリンデルワルトからインターラーケンに戻り、方向を変えてブリエンツ湖に沿って走る。雲が垂れ込めている。天気も悪いし、妻が車に酔ったようなので、遠回りせず、マイリンゲンという町から、グリムゼル峠を目指す。また山道になる。途中谷川で子供達と遊ぶ。

段々山が険しくなってくる。雷が鳴り始めたので、一旦車を止めて食事。ピカピカゴロゴロ、真っ黒い雲は出て来るし、心細い雰囲気になる。ダムを見つけて、降りて見に行ったら、まだ未完成で、水も溜まってなかった。次に見つけたダムは出来上がっている。あいにく天気が悪いので、遠くの山は雲の中。

道も狭い。対向車がすごく多い。やっと登り切ったところに可愛い湖がある。また雷と雨がすごい。しばらく休む。峠を下り、山の中腹を村から村へと走って、６時にツェルマットの入り口のテッシュの村に着く。宿泊用に荷物をまとめて、やっと電車に飛び乗る。ツェルマットまで一駅。ホテルは予約と違い、また1部屋しか取れない。子供のベッドを部屋に運び入れるのに、１時間もめる。町をブラブラ歩いて、雨がパラパラしてきたので、食事。

登山電車は日本人が多い。途中マッターホルンが大きく見える。ゴルナーグラードで降りて、ちょっと早足で歩いたら、気分が悪くなる。休み休み、展望台の先の雪が残っているところまで行く。

だんだん雲が取れてきて、太陽は熱いぐらい。モンテ・ローザを眺めながら、しばらく座り込んでいる。戻って展望台のレストランでで食事。ターフェルゼーまでブラブラ歩くことにする。二駅ほどの距離、山道を下る。全員具合も悪くもならず、楽しいハイキングだった。

人は全然いなくて、とても良い気分。マッターホルンも全体が良く見える。登山電車で戻る。ホテルで夕食。お魚がおいしかった。

ツエルマットからの登山電車は、最初のうちは展望がきかない。段々とマッターホルンが見えてくる。ゴルナーグラード(3135m)からの眺めは圧巻。周囲すべてが4,000メートル級の山々に囲まれている。

テッシュホルン(4490m)、アルプフーベル(4206m)、リンプフィッシュホルン(4200m)、シュトラーホルン(4190m)、モンテ・ローザ(4634m)、リスカム(4480m)、カストル(4226m)、ポルックス(4091m)、ブライトホルン(4165m)、マッターホルン(4478m)、デント・ブランシェ（4356m）、ガーベルホルン(4063m)、ロートホルン(4221m)、ワイスホルン(4505m)。しかし何と云ってもモンテ・ローザ。マッターホルンはピラミッド形の姿が美しいだけだが、モンテ・ローザの存在感には圧倒される。なにか獅子のような怪物の頭にも見える。そしてゴルナー氷河の巨大な流れが目の前を横切っている。スイス・アルプスのなかでベストだと思う。

1974.8.6　シャモニー　ホテル　モンブラン　

電車の時間を調べていなかったため、1時間半も無駄にする。シャモニーへの山道に入るちょっと手前で食事。途中国境を越えてシャモニーへ。まずホテルに行ってから町を散歩。モンブランもきれいに見える。以前来たことのあるレストランに家族を案内する。

シャモニーから駐車場のあるテッシュ駅への時刻表を確認しておかなかったので、時間をロスした。テッシュでマイカーに乗り換え、ローヌ川沿いの道に戻り、ジュネーブ方面へ走る。マルティニという町で、左折して、シャモニーへ向かう。フランス国境まで山越えだが、かなり慣れた。シャモニーに着いてもまだ日は高く、町歩きをする。町中はツエルマットに比べ、多少余裕がある。モンブラン初登頂を果たした人々の銅像が町の中心にある。

1974.8.7 　シャモニー　ホテル　モンブラン

天気はまた良くてホットする。10時前に登山電車の駅に着く。すごい人だかりで日本の観光バスが2台来る。すぐには乗れず、番号札をもらう。16番。1時近くまで駅前のレストランで待っている。やっと乗れて、エギュー・ディ・ミディに着く。高度が急に3000mも上がる。気分が悪い。エレベーターで展望台に行く。せまい。岩山のてっぺんで写真を写し、終わり。サンドウイッチを食べて、イタリヤ側に行くロープウエイに乗る。これも混んでいて、少し並ぶ。3台いっしょに動く4人乗り。下は氷河、歩いている人が虫のように見える。あちこちにクレパスが口を開けている。モンブラン、グランジョラスを見ながらヒヤヒヤ。着くとそこはイタリア、パスポートを見せる。眼下の氷河ではスキーをしている。帰りのロープウエイはラッシュアワーの電車のような混み方。夕食は駅の近くのレストランでスパゲッティ。

空中ケーブルでシャモニー(1035m)からエギュー・ディ・ミディ(3842m)までの高さに、一気に引き上げられる(30分)。全く垂直に上がっていく感じである。さらにピトン・サントラル・エレベータで展望台へ上がる。また駅へ戻り、今度は氷河を越えて、プンタ・エルブロンナ(3462m)までゴンドラで揺られながら移動する。そこはイタリア領。引き返す。この間、人はぎゅうぎゅう、場所は狭いで、ゆっくり風景を楽しむどころではない。グランジョラス、ダン・デ・ジュアン等の針峰や真下のヴァレ・ブランシェ氷河を目の隅に止めるのが精一杯。どうもここは登山家やスキーヤー達の場所で、観光客用ではない。クライネ・シャイデックの放牧地やゴルナグラートのレストランの方がずっと楽しかった。

1974.8.8　ジュネーブ　ホテル デュ ミディ

今はもうモンブランも何も見えない。雨は上がっているが、雲がすっかり覆い尽くしている。今日はジュネーブまで走る。だんだん白い山々が遠くなる。シャモニーからスイス領へ戻り、レマン湖の東端まで来た。これからレマン湖に沿って走る。まずモントルーの手前のシオンのお城を見る。モントルーで買い物をする。そこから自動車専用道路アウトバーンに乗って、ジュネーブに向かう。町に這入ってから、ホテルまで一方通行がたくさんあって、見えているのになかなか近づけない。歩いてレストランに行く。またフォンデューを食べる。値段の割には味がよくない。

この日は、レマン湖沿いの町や名所を訪ねながら、ジュネーブへ向かった。風光明媚な湖畔には、シオン城、モントルー、ヴェヴェイ、ローザンヌ、ニヨンというようなリゾートや観光名所が続いている。この辺はフランス語圏で、やはりドイツ語圏のチューリッヒ等とは違い、華やかで、少し怪しげで、カジノもあり、遊び場という感じである。シオン城は詩人バイロンの詩などでも知られているが、外観はともかく内部は薄暗く、いかにも牢獄と想わせる。別の機会にも訪れ、城内での懇親会に参加している。この時モントルーにも滞在したが、まあ会議や集会のための町である。ジャズフェスティバルで有名。ヴェヴェイやニヨンで車を駐め、湖を眺め、一息入れた。ヴェヴェイはネスレ本社があり、ワインで有名。チャップリンも晩年をここで過ごした。ニヨンにはローマ時代の遺跡が残っている。ローザンヌは走り抜けた。ジュネーブで、湖の中の大噴水を遠望する。明日はロワーヌ川を目指す。

1972年だったか、はっきり覚えていないが、リヒテンシュタイン侯国を訪れた、いや正しくは通過した。この国は、オーストリアの西端にへばりつくように位置していて、スイスとドイツに面する小さな、小さな国である。

1972.9.11

何処でリヒテンシュタイン国に入ったのか解からなかった。確か小さな小川を越した時、国境を通過したらしい(あとで調べたら、何とライン川の上流だった）。あたりは牧草地で、建物はない。もちろん税関などない。さんさんと日は照り、のどかなものである。しばらく走ると、数軒建物が集まっているところに出た。首都ファドゥーツである。実際には村である。東側の崖の上にお城があり、領主が住んでいるはず。お茶を飲んで、土産物,つまり特産物の郵便切手を買い込んで、さらに走る。20分もかからず、いつの間にか、スイス領になっていた。おとぎ話の国のようだった。

南北20km強、東西10km弱の国土である。東側は山で、あとは猫の額ぐらいの平地が残っているぐらい。通貨はスイスフラン、軍隊は保持していない。当時は切手が主な収入と言われていたが、実際には、大手企業も存在し、国の財政は豊かだったようで、現在でも変わりないらしい。勿論、郵便切手でも稼いでいる。1000年近い歴史を、どうやって安泰に切り抜けてきたのか、不思議な国である。